顧客情報との付き合い方

この記事についてAbout this article

ゴールGoal 顧客情報をどこまで入れるか決める

こんなあなたへFor you if 顧客名や取引内容を扱う事務所の方

この記事の要約Summary

顧客の名前や取引の中身を、AIにどこまで入れてよいか。信号の3色で線を引き、事務所のルールを1枚にします。

所要時間Time
4分 作業時間:約work approx. 20分 min
必要な準備What you need
データData 自社で扱う顧客情報の種類

線引きを決めると、安心して使える。

※2026年9月時点


顧客情報は信号の 3 色で線を引く。赤信号は情報の種類で決めておく。1 枚のルールにすれば線の内側で思い切り使える。入れてよい、加工して入れる、入れない

顧客情報は信号の 3 色で線を引きます。赤信号は情報の種類で決めておき、1 枚のルールにすれば線の内側で思い切り使えます。

「顧客の情報は、どう扱えばいいの?」

導入の相談で、いちばん真剣な表情で聞かれる質問がこれです。

顧客の情報は、どう扱えばいいの? 名前を入れてもいいの?

この記事は、その疑問へのお答えです。 結論を先に。

「入れてよい情報」「控える情報」のリストを先に文書化しておく──これが定石です。 線引きさえ決まれば、安心して使えます。

大事なのは、その場その場の判断に委ねないこと。 順を追って、線の引き方をご案内します。


学習利用はプランと設定で決まる

線引きの前に、土台となる事実をひとつ。入力した内容がAIの学習(訓練)に使われるかどうかは、プランと設定によって決まります。

おおまかな考え方はこうです。

  • 個人向けプランでは、入れた内容を学習に使う設定が標準になっている場合があります。ただし多くの場合、設定でオフにできます
  • 法人向けプランは、学習に使わない条件が標準であるのが一般的です

つまり「AIに入れたら全部学習される」も「絶対されない」も、どちらも不正確。自分のプランの規約と設定を一度確認することが、すべての出発点です。 確認は一度で済みます。 今日の設定画面で、学習利用(データ利用)の項目を見ておいてください。


20分でやること

自分のプランの学習設定を見る

契約しているアプリの設定を開き、学習利用(データ利用)の項目が今どうなっているかを見ます。

  • 個人向けプランでは、入れた内容を学習に使う設定が標準になっている場合があります。ただし多くの場合、設定でオフにできます
  • 法人向けプランは、学習に使わない条件が標準であるのが一般的です

確認は一度で済みます。「AI に入れたら全部学習される」も「絶対されない」も、どちらも不正確です。

自分のプランで学習利用がオンかオフか、自分の言葉で言える

うまくいかないときは

項目が見当たらない → そのサービスのヘルプで「プライバシー設定」を調べます。

情報を3色に分ける

入れてよい/加工すれば入れてよい/入れないを、信号の3色で分けた線引き表

区分例扱い
入れてよい一般的な相談、雛形づくり、公開情報、自社の定型文そのまま任せてよい
加工すれば入れてよい顧客の相談概要、契約書の構成、数値の傾向名前等を伏せてから
入れない顧客を特定できる氏名・住所とその案件の組み合わせ、マイナンバー、口座・カード番号、健康情報などの要配慮情報AI に渡さない

赤信号は「情報の種類」で決めます。「この案件は大丈夫そう」という都度の感覚判断は、忙しい日ほど揺れます。

自社で扱う情報を 3 つの段のどれかに置けている

うまくいかないときは

どの段か決まらない情報がある → 赤に置きます。あとから緑に動かすほうが安全です。

1枚のルールにする

個人の心がけで終わらせず、誰が使っても同じ線になるように、下をメモ帳に写して、自社の言葉に直します。

# AI利用ルール(第1版)

1. 学習利用の設定:オフにして利用する(設定日: 月 日/確認者:  )
2. 入れてよい情報:一般的な相談、雛形、公開情報、自社の定型文
3. 加工して入れる情報:顧客案件の概要(固有名詞はA社・Bさん等に置換)
4. 入れない情報:顧客特定情報と案件の組み合わせ、マイナンバー、
   口座・カード番号、要配慮個人情報
5. 迷ったら:入れずに、責任者に相談する

5 行でも、あるとないとでは大違いです。指示書に「顧客名はイニシャルにする」と書き添えておくと、AI の側にも同じルールを守らせられます。

5 行のルールのファイルがあり、1 行目に確認した日付が入っている

うまくいかないときは

責任者が自分しかいない → そのままで構いません。「迷ったら入れない」だけ残します。


匿名化:「A社・Bさん」で回る

「顧客名を入れないと、相談できないのでは?」──実は、ほとんどの仕事は匿名のままで成立します。

  • 固有名詞を置き換える:「株式会社山田商事」→「A社」、「佐藤様」→「Bさん」
  • 特定につながる詳細をぼかす:「○○市で3店舗展開の飲食業」→「地方都市の小規模飲食業」
  • 数字は丸める:「年商2億3,450万円」→「年商2億円規模」

AIに頼みたいのは文章の型や整理の枠組みであって、固有名詞そのものではありません。型は匿名で作らせて、実名は手元で差し込む。この分業にすれば、赤信号の情報はそもそもAIに渡らなくなります。


まとめ

  • 学習利用はプランと設定で決まる。まず自分の設定を確認する
  • 情報を3色に分け、「入れない情報」を種類で決めておく
  • 匿名化すれば、大半の仕事は問題なく任せられる
  • 線引きは1枚の文書にして、事務所の共通ルールにする

一見、制約の話に見えますが、逆です。線を先に引いた人こそ、線の内側で思い切り道具を使えます。何を守り、何を任せるかを言葉にする力──それが、信頼を扱う仕事でAIを活かす土台になります。


次回:「『戻せる』は安心の設計──バックアップという土台」

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